低学年 走の運動遊びについて




走の運動遊びについて 基本的な考え方

距離や方向などを決めて走ったり、手でのタッチやバトンをパスする折り返しリレ ー遊びをしたり、段ボールや輪などの低い障害物を用いてのリレー遊びをしたりする中で、運動遊びの楽しさ、心地よさを引き出せるよう指導します。

どのような力をもった児童においても競走(争)に勝つことができたり、意欲的に 運動に取り組むことができたりするように、楽しい活動の仕方や運動の場の工夫を することが大切です。




「遊び」のとらえ方

児童が力いっぱい活動できるように必要な要素

競走(争)があること

勝ち負けをめぐって生まれる緊張感が児童の意欲を生み出します。

偶然性があること

結果が予想できない緊張感、全員に勝てるチャンスがある期待感が児童の意欲を生み出します。

友達の動きをまねる機会があること

友達のよい動きをまねることで、目で見た動きをなぞる力がつきます。これにより新しい動作や 運動を自分の動きとして取り込むことができるようになっていきます。

自分の身体が揺れたり、傾いたり、回ったりしている感覚を味わえること

児童にとっては日常生活の中ではなかなか味わえない感覚を得られるので、活動に熱中すること ができます。

より楽しくなるように児童が創意工夫できる活動

運動遊びの場や行い方はシンプルに設定しておくことで、児童がより活動を楽しむために、自発的 に工夫していくことができるようにします。

指導者は児童の自発的な発想から生まれた行動を前向きに受け止めます。運動パターンのバリエー ションとしては以下のようにまとめられます。

空間的調整

自分のペースで
・上下に、左右に、ななめに
・直線的に、曲線的に
・いろいろな体の部位を使って

ほかの動きに対応して
・ほかと同じ方向に
・ほかと異なる方向に

時間的調整

自分のペースで
・速くする、ゆっくりにする
・短時間で、長時間にわたって
・リズミカルに
・速さに変化をつけて

ほかの動きに対応して
・タイミングを合わせて
・タイミングをずらして

力量的調整

自分のペースで
・弱くする、強くする
・一定の力で
・力に変化をつけて

ほかの力に対応して
・ほかの力と合わせ

神経系の発達が期待できる活動

授業づくりにあたっては、以下の運動感覚を味わわせます。

リズム感覚

様々なリズムに体の動きを対応させる能力。

平衡感覚(加速度感覚、スピード感覚)

体がどちらを向いているか、どれくらい傾いているか、動いているかを瞬間的に感じ取り、効果的、 効率的に体を動かす能力。

方向感覚

空間を移動する際に、自身の進行方向や出発した場所の方向など、空間における大まかな方向を把 握する能力。

足裏感覚

足の裏が地面に接地している時に、体重が足のどのあたりに乗っているのかを感じとる能力。

 「楽しさ」のとらえ方

動きをめぐる楽しさ。心地よさ。躍動する楽しさ

低学年の時期は、体の動かし方 などの技能ポイントを意識させるよりも全力で運動することを 意識させましょう。そのためには運動量の確保が必要です。

また、伸び伸びと体を動かす楽し さや心地よさを味わったり、 競走したりする中で動きを身に付けていくことができる運動の場が必要です。

「○○を楽しんでいたら気持ちよかったな」 「たくさん運動して気持ちよかったな」 「○○ができるようになったな」

方法をめぐる楽しさ

「工夫する」とは、運動遊びの行い方を知って、楽しく遊べる場や遊び方 を選ぶことです。

また、動き方を知って、友達のよい動きを見付けることです。

運動がより楽しくなるように遊び方を工夫させたいです。よい動きや友達との協力の仕方などにも気付くことができるように、声をかけていきたいです。

「もっと楽しみたいから、 ○○を工夫しよう」

協力する楽しさ

多くの仲間と、遊びの場やルールを共有することで、 人とかかわることの楽しさを味わうとともに、自分の気持ちをコントロールすることも学ぶことができます。

友達と協力する学習を意図的に計画しましょう。

友達とのかかわり方

誰と・・・「2人で」「3人で」「チームで」「全員で」 「同じめあてを選んだ同士で」

何する・・・「見合う」「励まし合う」「認め合う」「競走する」

「○○できるから、友達との競走は楽しいな」 「○○さんのようにできるようになったぞ」

多様な動きをつくる運動遊び(体を移動する運動遊び)との違いについて

走・跳の運動遊び →陸上運動の基礎となる動きを身に付ける

・・・将来的に陸上運動につながる動きを主として指導する。

体を移動する運動遊び →体の基本的な動きを身に付ける

・・・陸上運動など特定の運動に限らず、様々な運動につながる 動きを取り上げて指導する。

ただ、これらの運動遊びは関連が深く、似たような運動遊びを取り扱う ことも少なくないので、ねらいを明確にして指導することが大切です。

年間指導計画について

学習指導要領では2学年ごとのまとまりで指導内容が示されています。 示されている指導内容は2年生の最終段階までに行われるべきものですから、1年生では習得が難しいこともあります。

1年生のうちに何を身に付けさせておきたいか、それをもとに2年生では何を身に付けさせた いかを明確にして計画を作成します。

「走る」という動きは、様々な運動の基になります。そのため、年度の早 い段階で、基礎的な走の運動感覚を身に付けさせたいです。

学習の振り返りの時間について

振り返るべき観点

振り返りの時間はその時間で学べたことをみんなで共有し、次の時間以降に活用していくことができるようにする時間です。

例えば・・・

技能に関すること

○ねらいに合った動きのこと

○よい走りにつながる価値のある動きのこと

○次の学習への発展性のある動きのこと

態度に関すること

○力いっぱい運動できたこと

○守るべき約束が守れたこと

○準備や片付けに協力できたこと

○素早く集合できたこと

思考・判断に関すること

○運動がもっと楽しくなるように工夫したこと

・場やルールの工夫 ・動きの工夫

○体の動かし方について気付いたこと

・自分の動きから気付いたこと ・友達の動きから気付いたこと

時間に限りがあるので、話題にすることは、その1時間のねらいや重点とした評価規準によって選びます。

振り返りで話題にすることを事前に伝えておき、話題について発見があったり、疑問に思ったりしたら帽子の色を変えるという約束をしておくと便利です。運動に取り組んでいる最中に帽子の色を変えたわけを聞き取っておき、ねらいに合っ た発見をしている児童に発言させることができます。

次の学習につなげていく方法

振り返りの時間に意見が出たからといって、すべての児童がその意見について興味をもったり、理解したりしているとは限りません。

以下のような方法で児童の理解を深め、活用できるようにしていくことも必要です。

○学習カードにコメントする

○次の時間の導入時に確認するまた、学習の時間以外でも発信し、活用していく

○教室や学習の場で掲示する

○学級通信などで発信する