「マット運動」の安全への配慮

 小学校における器械運動系の傷害発生件数は、ボール運動系に次いで2番目に多い。この事実を踏まえ、以下の点に配慮して指導する必要がある。




健康に関する情報の収集

  マット運動は、例えば後頭部や背中などをマットに接して転がる技や、腕や足で支えて回転する技、腕や片足で体を支えて静止する倒立やバランスといった技など、体の様々な部位を使って行う運動である。そのため児童生徒が両手、両足、首、肩、腰などの体のいずれかにけがなどの不安を抱えていては、安心して学習に取り組むことができない。また、けがや体調不良などの不安を抱えての無理な挑戦は、たとえそれまでにできていた技であっても新たなけがや事故につながり、結果として大きな事故に発展してしまうことがある。全身を使い多様な身体操作が要求されるマット運動の指導においては、他の領域以上に児童生徒の健康状態を的確に把握し事故の未然防止に努める必要がある。




安全な場作り

  セーフティマットやスポンジマットは、マット運動のほん転技群の技の段階的練習や技の終末局面において、その勢いや着地の衝撃を和らげるには極めて効果的である。

反面、セーフティマットがあることによって逆に無理な動きや無茶な動きをすることもあるので、使い方には十分な指導が必要である。

また、セーフティマットは厚さの段差があるので、置き方や置く場所によっては事故につながったり、柔らかいからといって着地を油断すると、思わぬけがを招いたりすることもあるので、着地した後、足を取られないようにするなどの注意も必要となる。

セーフティマットの表面が破れて中身のスポンジやウレタンがむき出しになっている場合には、早急に補修するなど細心の注意と定期的な点検等がとても重要である。

ほかの運動につながる運動感覚

  器械運動の中でもマット運動は、鉄棒運動や跳び箱運動の基礎となる動きを含んだ技が多い。そのため、小学校低学年のときから、マットを使っての運動遊びの学習を通して、多様な方向に転がったり、腕で支えて移動するなどの運動遊びをたくさん経験したりすることによって、安全に転がる基本的な技能が向上するよう指導していくことが大切である

マットの置き方、準備・片付けについて

マットの置き方については、壁とマットの間に児童生徒が入ることができるように間隔を設けることにより、スムーズに持ち運びできる。

  準備や片付けを一方通行で行うようにすると、短時間で安全に行うことができる。