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主体的に行動するには
主体的に、つまり自分から進んで行動するには何が必要かということです。
質問に質問を返すのは失礼なことと重々承知していますが、反対にあなたに問うてみましょう。
「それなら、あなたは、どんなときに自分から進んで(つまり主体的に)行動できますか。」
自分を対象に考えると結構いろいろと考えが浮かぶでしょう。多分、下の3つだと思います。
①やりたいとき
②自信があるとき
③やらなくてはならないとき
人が行動するには動機づけが大切です。これらの3つの行動原理をきちんと押さえて、主体的に行動をさせる方法を考えていくと、答えは案外簡単に見つかるものです。
動機づけについて
その前にそれぞれの動機づけについて考えてみましょう。
①やりたいとき
3つのうち、①の理由「やりたいから」が一番、子どもたちにとっては主体的に行動しやすい動機づけになるでしょう。興味がある、やりたい、失敗してもいいという思いがあります。低中学年がこの行動をよく示します。
失敗を考えずに、とにかくやってみようと行動するのです。怖いもの知らずで、恥ずかしさをあまり感じない低中学年の特徴です。
ただ、自分の力量を考えずに、やみくもに手を挙げ、後で困ってしまうというのも低学年の特徴です。まだあまり思慮深くないわけです。それでも手を上げること自体が大きな経験や力になるので、ぜひチャレンジをさせていきたいものです。
②自信があるとき
高学年になるほど、②の理由「自信があるから」が行動原理になります。
やりたいことであっても、周りの目を意識して「できる」と思ったときに行動するのです。後先考えずにチャレンジをしていた低中学年に比べると、結果を意識する分、成長したといえます。
しかし、この動機づけは一歩間違うと、行動しなくなる危険性を秘めています。
例えば、バスケットボールの練習で、「フリースローを必ず2本決めなさい。1本でも落とすことはありえません。」と言われたら、あなたは挑戦しますか?躊躇する人がほとんどでしょう。
それは、2本決める自信がないからです。でも、100%自信があるもの、絶対に失敗しないものはあるのでしょうか。
だから、「自信がある」を行動の原理にしてしまうと、動けない人になってしまう場合があるのです。高学年の子ども達に“しない“ 理由を聞くと、多くの子が、「自信がないから」を挙げます。これを認めてしまうと、その子たちは今後もまず主体的に動くことはないでしょう。
③やらなくてはならないとき
③「やらなくてはならないから」が一番高度な行動原理になります。
なぜなら、恥ずかしい、自信もな い、面倒だ、だるい、誰かがやってくれるのを待ちたい。し なくちやいけないのはわかるんだけど…。それらの負の感情を乗り越えて、「でも、やらなくてはならないんだ !」と立ち上がるだけの心の強さが必要となるからです。
この強い意志をもった人を、主体的に行動できる人というのです。
①「やりたいから」や②「自信があるから」で行動している人は、自分の興味の範囲内や自信のあることしか、“主体的に”行動しません。
ただし、①や②の理由でも、行動原理として常に主体的に行動してきた子は、③への移行は容易にできます。
低中学年で、失敗を恐れずにどんどん発表したり、自信をつけさせて進んで活動をさせたりという指導を怠るとそのつけは、高学年に出てきてしまうのです。
高学年の児童に主体的に行動させるには
今回の質問は、③「やらなくてはならないから」を目指すものとして考えます。
人の成長から考えると、①→②→③という流れは自然であり、ここを乗り越えさせるのが高学年指導の大きな目標の一つだからです。
これまで主体的に行動してこなかった児童を、主体的に動かすためには、①②の行動原理から考えると「興味のある、やりたがる」ものを設定したり、「自信のもてるもの」を与えたりすればいいのです。または「これってすごくおもしろいよ」「まだやったことないでしょ。とりあえずやってみてごらん」と興味を持たせるようにしたり、「失敗は当たり前だ、気にするな」「絶対出来る。自信をもて!」と不安を打ち消す言葉かけをすればいいのです。(ただし、頻繁に、どんな場面でも、常に前向きに、です。やらせたい場面だけで言っても、子ども達は動きません。)
さて、もう少し具体的に事例を挙げて説明しましょう。
主体的に行動できない子ども達の言い訳が、前述したように「恥ずかしい、自信もない、面倒だ、だるい、誰かがやってくれるのを待ちたい…。しなくちゃいけないのはわかるんだけど…。」
だとすると、その「子ども達の言い訳」が、そのまま指導の方針になります。子ども達の“しない“理由をきちんと把握して、その一つ一つに対応出来るようにしましょう。
恥ずかしいから
これはあいさつ指導や歌を元気に歌わせる、挙手・発言の回数を増やす、とにかく恥ずかしさを感じる活動をたくさんさせて、できないときには丁寧に指導するのです。
ども達、恥ずかしくてもするということに段々慣れてきます。人は習慣の生き物ですから。だから、「授業を活発にする」は大切なことなのです。
自信がないから
自信をつけさせる指導をする。基本はほめることです。小さな成功を経験させて、その都度ほめる。そうすると、どんなことでもできるだろうと子どもたちも挑戦するようになるのです。例えば、給食を残さず食べた、前回より漢字テストができた、がんばって手を挙げて発言した等で十分です。小さな成功体験をたくさん味わわせてください。
面倒だからしない、だるいからしない
これは、「面倒だからしない」「疲れるからしない」ことが理にかなっていない、おかしなことであることを認識させることです。「サッカーは疲れるよね。でも楽しいでしょ。」「ゲームもやると疲れるよね。でもするでしょ?」「中休みに外で遊ぶと疲れるよね。でも遊ぶよね。」疲れるからしない、だるいからしないというのでは、世の中の楽しい事は全部できなくなりますし、何よりも生きていけません。
全ての行動は、疲れるし、面倒なことばかりだからです。
誰かがやってくれるだろう、自分より適任がいる
「自信がない」と似ていますが、やらないという結果が同じでも、こちらの方がより強く指導すべき理由になります。やりたくないことを相手に押し付けているからです。
ジッと動かず、我慢して黙っていて、責任感のある子や黙っていられない子が「僕がやります」「私がやります」と言いだすのを待っているのです。
意図的ではない子もいるかもしれませんが、必ず指導します。
「ずっと黙っていて、 誰かが仕事をやってくれると、ラッキーとかよかったとか思っているでしょ。」
「あいつ、『また仕事引き受けてばかだよな』なんて思っている人もいるかもしれないね。」
「感謝の気持ちは、もっているかい。せめて、『何もできない僕らのためにありがとう 』ぐらい感じていますか?」
やらないことに罪悪感やだめだ的な感覚を必ずもたせるようにします。すぐには行動に移せないかもかもしれませんが、 子ども達の心にしなくてはいけないんだということを植え付けることだけは怠らない方がいいでしょう。
では、まとめましょう。「主体的に行動する児童に育てる」には、主体的な活動はなぜ必要か、しないことの何がいけないのかをしつかりと児童の心に響くように説き(この話術はとても重要です。)、毎日の小さな行動で習慣づけて、自信を持たせ、思いっきりほめていくことでや
る気をだす。
こう書けば簡単ですが、細かく丁寧な指導と、子どもの些細な行動を見逃さずにほめる観察力も必要となります。これができれば意欲あふれる、積極的な児童やクラスを作ることができます。そうしたら、授業や学級活動はもちろん活発になりますし、クラスの雰囲気も格段によくなります。
ぜひ、この力をつけるようにがんばってみてください。
評価のポイント:クラスで一番怠け者でやりたがらない人を変えることができるかどうかです。ぜひ挑戦してみてください。