規範意識の育て方




規範意識を育てるとは

規範意識を育てるというのは、簡単に言うと「 ルールを守る」「きまりを守る」ということです。これは、小学校の全教育活動の中で育てていかなくてはならない基本的なことです。これができないと社会性を身につけることができないからです。

集団行動などとることができません。廊下を走ったり、掃除をしなかったり、遅刻をしたり、係活動をしなかったり、クラブや委員会では自分勝手なことをしたり、何よりも授業を真面目に受けることもしないでしょう。

つまり、教育の根底をなすことなのです。

『規範意識の育て方を教えてほしい』という質問はサッカーで例えると、『ボールのけり方を教えてください』…、いえ、『ランニングの仕方を教えてください』みたいなものです。

基礎中の基礎です。長くサッカーをやっている身なので、サッカーに関しては、初心者が来ればどんなことでも喜んで教えます。かなり専門性も強いですし…。

でも、教師を目指して長年勉強してきて、教師になった人が「ルールの守らせ方を教えてください」と来たらどうでしょうか。

エッ、そんなことを訊くのと驚かれてもしかたのないことなのです。

本来は規範意識の育て方などを訊ねることなど、 教師を目指して勉強をしてきたのなら、あってはならないことなのです。これができない教師は、満足に授業などできていないからです。子ども達が騒いだり、授業を無視して好き勝手していたりするからです。

規範意識を育てることは、 教師として絶対にできなくてはいけない力だと認識してください。




規範意識の崩壊

…と厳しいことを言いましたが、実をいうと今ここがかなり乱れているのも事実です。

新人・ベテラン 等の経験に関係なく起きています。ベテランでさえそうなのですから、特に若手や教員になつてまだ日が浅い人にとっては、『できて当たり前』の一言でくくられてしまうべきことではなくなってきています。

学級崩壊とは、規範意識の崩壊です。

社会の変化、子ども達を取り巻く環境の変化、ストレスの増大など外的な要因を探すことは容易にできます。

しかし、外に理由を探して、「だから仕方がない」と言っている間は何も変わりません。
「子どもが変わった」「 社会が変わった」と外部の変化のせいにして、自分を変えていけない、または社会の変化を考慮にいれた指導の仕方ができない教師のクラスは、学級崩壊を起こ しやすくなっています。

だから、自分のやり方がきっちりと決まっているベテランの教師ほど、昔とのギャップに悩み、学級指導ができなくなるのです。

また、規範意識の指導には、同時に確固たるルールを確立する力も大切になります。指導に自信のない若い先生にはそれができない場合があります。

「先生、どうしてシャーペンを使ってはいけないの ?」「ゴミを(授業中に)捨てに行っただけなのにどうして叱るの?」「休み時間にトランプしてもいいでしょ。」それくらいいいじゃないかという子ども達の問いに、子ども達に好かれたい、子ども達に人気のある先生でいたいと考え、『まあ、いいか』という指導をしてしまいがちになるのです。

ベテラン教師によく見られるように一つの考え方にこだわった方法や指導法をもち過ぎてもだめであり、若手教師がするような子ども達に迎合する曖昧な考えでもだめなのが、この「規範意識を育てる」なのです。

強い信念・意思をもちつつも、社会や子ども達の変化に臨機応変に対応する力が必要とされるのです。

あなたはどうですか?自分のクラスの様子を見直してください。授業中におしゃべりはしていませんか?休み時間に次の時間の準備をしないで遊んでいませんか。廊下を走ったり、廊下で鬼ごっこをしたりしていませんか?いきなり授業中に立って、ゴミを捨てたり、消しゴムを拾ったり、ロッカーに荷物を取りに行ったりしていませんか?

これら、クラスのルールや友達間の約束を守っているでしょうか。そして、あなたはそれに気がついて指導ができているでしょうか。

多分、できていないでしょう。そんなにうるさいこと言わなくてもいいだろうと思っているからです。

そして、そこから崩れていくクラスをこれまでもたくさん見てきました。「蟻の穴から堤は崩れる」のです。

規範意識の育て方

規範意識は、一つ一つ丁寧にどんなに小さなことでも正しいことを教えていくことで、獲得できていくのです。廊下を走らせたくないのなら、「廊下を走らない」という指導をするだけでなく、他の当たり前 の指導を積み重ねていく必要があるのです。それこそ、毎日の小さな指導の連続が、いつか子ども達の心の中に浸透し、全ての行動を変えていくのです。

また、ルールは「禁止するもの」ではなく、「行動をおこさせるもの」であることも大切です。

「廊下を走らない」ではなく、「右側をゆっくり歩く」と指導するのです。

人間、「するな」と言われたらしたくなるのが人情です。「ゴミを授業中に捨てない」のではなく「手を挙げて、先生の許可をとりましょう」です。ルールを守らせるために、どういう行動を示せば効果的なのかは、自分で考えてみてください。

基本的には「規範意識を育てる方法」は、「先生に対する言葉遣いの指導法」と同じです。というより、 これらが人を育てるために大切な手順・方法だと思います。

先生に対する言葉遣いの指導法

①普段から教師がお手本となる態度をとる。→お手本となる

②指導する子どもたちと良い関係を築く。→共感度を高くする。

③誤った行動をしたときは即座に注意する。→適宜、注意・指導する。

④ルールを守らなくてはならない理由を納得させる。→納得させる。

私は②の「共感度を高くする」を非常に重視しています。先生が怖いから言うことをきくのではなく、好きだから言うことをきくということ目指しています。それと対になっているのが④の「納得させる」です。頭ごなしでなく、きちんと納得させられる理由を提示すると子ども達は「この先生は、きちんとわかってくれる」と共感をもってくれます。

共感度を上げる方法は、「遊ぶ」「しゃべる」「ちょっとしたおまけをする」などいろいろありますが、1つレベル高い「納得させる」ができるようになると、全ての指導において優位に話をすすめることができるようになります。

でも、実をいうと一番、ども達の共感度をあげることができるのは、「授業がうまい」なのです。 「うまい授業」「楽しい授業」「よく分かる授業」には、 子ども達の共感度を上げる要素がたくさん盛り込まれていますし、そういう授業をした結果さらに子ども達の共感度があがっていくのです。