先生に対する言葉の遣い方の指導法

これは、先生に対しての言葉遣いの問題だけではありません。

例えば、友達に対して、両親に対して、コーチに対して、近所の人に対して、全く関係のない店員に対して、常にふさわしい正しい使い方ができていないと、教師に対してだけ正しい言葉の使い方などできないからです。

状況にあった、正しい言葉遣いをさせる指導法をどうのようにしたらよいかということになります。(子どもたちと教師の関係がよいことを前提とします。もし、これが良くないのなら、効果は薄いでしょう。「親しき仲にも礼儀あり」を目指しているのです。)




正しい言葉遣いをさせるために

①普段から教師がお手本となるしゃべり方をする。

②常にどんな時でも教師が子ども達の上位にいる。(大人はすごいと思わせる指導をする)

③誤った使い方をしたときは即座に直させる。

④正しい言葉を使わなくてならない理由を納得させる。

①普段から教師がお手本となるしゃべり方をする。

①「お手本となるしゃべり方」は、常に教師は意識して丁寧語、または美しい言葉を使うようにするということです。授業中はもちろんですが、普段の指導や会話のときでも心がけてください。

言葉は耳から入ったものを自然と学習し使うようになります。子ども達が一番よく耳にし、最も影響を受けるのは教師の言葉、しゃべり方なのです。

「うざい」「面倒」「疲れた」などの言葉を何気なく使うのは厳禁です。

語尾が荒くなったり、ぞんざいになったりするのは避けましょう。子ども達も同じようなしゃべり方になります。

丁寧な言い方をする先生が、許せないことや認められないことを叱るときに、わざといつもと違う厳しい言い方をするのは、子ども達の心に強烈に印象に残ります。子ども達を心から反省させることもできます。これも話術のうちの一つです。普段とのしゃべり方の違いを見せることで、重要性を深く認識させるのです。

これは授業でも応用することができます。

また、本当に怒ったときに、さらにもっと静かに落ち着いて語ることで、子ども達の心にその内容を響かせることもできます。教師のしゃべり方は非常に重要です。

②常にどんな時でも教師が子ども達の上位にいる。(大人はすごいと思わせる指導をする)

②は、教師が心から尊敬に値する人であり、ものすごい力をもった人であることを示せばいいだけです。

子どもたちと同じ土俵に立つことはありません。自分の得意な分野を見せればいいだけのことです。

あなたが運動が得意なら、クラスで一番運動のできる子とあなたの得意種日で勝負すればいいのです。サッカーが得意な子とはサッカーで勝負せず、バスケで勝負をしたり、単純に腕相撲や50m競争で勝負をしたりすればいいのです。

勝負する必要もありません。見せる、聞かせるだけでもいいのです。博学な知識を常に多くの場面で語るのもいいでしょう。ピアノや歌、楽器などの腕前披露でもいいのです。

とにかく、うちの先生はすごいと思わせることを示しましょう。(でも、一番は授業がものすごく面白いかなと思っています。)

「先生はすごい」が、普遍化されて「大人はすごい」になっていけば、どんな大人にも丁寧な言葉遣いをするようになります。

③誤った使い方をしたときは即座に直させる。

③の誤った使い方とは、文法上の間違いではなく(もちろんそれも直さなくてなりません )、使うべき場所や使うべき相手に対してきちんとした言葉遣いを使っていないことを正すということです。

「先生、今日忘れ物しちゃった。ごめん。」→「先生、今日忘れ物をしてしまいました。ごめんなさい。これから気をつけます。」

「先生、外で遊んでいい?」→「先生、外で遊んでいいですか?」

子ども達、親愛の情をふくめて、親しげに話しかけてくれます。しかし、いつもじゃないですが、この丁寧な言い方もある程度はきちんと言えるように、折を見て指導はしたほうがいいでしょう。

日々の指導が子ども達の丁寧な言葉遣いを育てていくのです。

④正しい言葉を使わなくてならない理由を納得させる。

④の「正しい言葉遣いをしなくてはならない理由」をあなたは説明できますか。言葉遣い指導をしているときに、子ども達が次のように質問してきたらあなたはどのように答えますか?

「先生、どうして丁寧な言葉なんかつかわなくてはいけないの?」

「それが常識だからだ!」「使えないと大人になって困るからだ!」

これでは子ども達は納得しません。関西では、敬語や丁寧を普段からあまり使わないそうです。だから関西の知人が関東に来て、就職試験を受ける時に非常に困ったという話を聞きました。

だったら、関西で一生暮らすのなら、敬語や丁寧語はいらないのですか。そういう状況でも、あなたは丁寧な言葉遣いが必要な理由を説明できますか。

実を言うと「常識だ!」でも「困るから!」でも、立派な理由になります。

肝心なのは、それがストンと子ども達の心に落ちるかどうかなのです。

頭ごなし的な、それが当たり前だろ的な高圧的な態度では決して納得しないでしょう。納得しないと、教師の前だけでしか、きちんとした行動をとりません。それが高学年の特徴なのです。

結局は子ども達を(人を)動かすのは、心に響く言葉です。

そのためには、話術を磨くことなのです。自分だったら、どうやって子ども達に納得させるかを考えてみてください。①~④までをきちんとできるのなら、子供たちの、教師に対する言葉遣いは劇的によくなります。大変かもしれません。時間もかかることでしょう。それなら、一番簡単にできて、効果が大きなことから始めましょう。まず「院より始めよ」です。①「教師がお手本となるしゃべり方をする」をやってみてください。