努力の価値を実感させる




過程の大切さ

「練習は裏切らない」「努力は必ず報われる」「ちりも積もれば山となる」

私が好んでよく使う言葉です。努力や積み重ねの大切を重視しているからです。

「終わり良ければ全てよし」

私が絶対に認めない言葉です。途中経過はいい加減でも、最終的にできればいいんだという意味合いが入ってきてしまします。結果主義の言葉と私は考えています。教師の立場で、『努力しなくていい、結果さえよければいい』と思って指導している方は1人もいないでしょう。

しかし、「終わりよければ全てよし」はわりとよく聞く言葉なのです。意味をきちんと把握しないで、状況に流されて、フッと使ってしまうことが多いのです。

例えば、運動会「組体操」で、補助倒立ができていない子がたくさんいました。動きもだらだらして、切れがありません。 教師の指導が徹底せず、できない子に対する指導も中途半端だったに違いありません。でも、最後の大技が成功して、拍手喝さいをもらいました。これで、「よくがんばったね。終わり良ければ全てよしです」先生方が使っていたとしたら、子ども達はそこから何を学ぶと思いますか?

「終わりよければ全てよし」を言葉でなく、行為で示している場合もあります。例えば、あと30秒ぐらいで全校朝会が始まるというときに、子どもが登校してきました。クラスに行き、ランドセルを置いてくると間に合いません。担任の先生は「間に合わないから、ランドセルは靴箱に置いてすぐに整列しなさい。」と指示します。その子どもは、周りで見ていた子ども達は今後どういう行動をとると思いますか。緊急避難的にやるのは仕方ありません。しかし、その後、きちんと注意・指導しないと、全校朝会時にラ ンドセルが靴箱の前に山盛りになることは間違いありません。このような誤った指導をあなたは気づかずに行っていませんか?

だから、この言葉を聞くたびに、同様な行為を見るたびに、いつも違和感を抱いていました。

「最後が良ければ、途中はどうでもいいの?」 「結果が良ければ、方法はどうでもいいの?」 反対に「ものすごく がんばって努力しても最終的にダメだつたら、それはどうなの」と。

もちろん、先生方も努力してダメだつた子に対しては、ほめて励ますでしょう。でも、言葉には力があります。「結果さえよければあとはどうでもいいんだ。」ということを暗に示すような言葉かけや指導は「努力なんか馬鹿らしい」「最後だけうまくやればいい」「正直者は馬鹿を見る。」「出来なければダメ」という 誤った考え方を子ども達に植え付けてしまうかもしれません。

教師は言葉に対して敏感になり、正しく使えないと子ども達の心を間違った方向に導いてしまうこともあるということを肝に銘じておきましょう。

「終わり良ければ全てよし」を、もし私が使うとしたら、こういうときです。

「ものすごく練習をがんばったよね。いっぱい努力したよね。それでいい結果ができたでしょ。ねっ、いつも言っている通り、努力は裏切らないでしょ。中間も結果も全て最高だったよ ね。こういうのを、本当の「終わりよければ全てよし」というのですよ。」

私は結果が良くても、それまでの過程が悪ければ、絶対にほめません。それは、私の指導上の信念として、子どもたちもよく分かっていますし、逆にどんなに結果がわるくても努力をしていたのなら、先生は認めてくれるというのも理解しています。だから、私のクラスでは、子ども達に目標やねらいを考えさせたり、終わった後の感想を書かせたりすると、文中に「努力」という言葉が非常にたくさん使われます。

教師の思いは、子ども達の必ず伝わるものなのです。

ちなみに、“努力”は運動会や学芸会など行事で使うだけでなく、生活指導上や学習中にかなりの頻度で使うようにしています。あえて“努力”という言葉を使い、そのスモールステップの積み重ねで学力が向上したという意識を子ども達に植え付けるのです。

そうすると、子ども達は毎日の努力で勉強ができることを知り、どんなことでもがんばればできるようになるという積極性が生まれてくるのです。




努力の大切さを実感させるために

努力の大切さを実感させるために、意図して行っていることです。

・テストができないときは残り学習を行い、必ず100点をとらせる。

・リコーダーをできない子は、できるまで休み時間に練習させる。

・なわとびカードは必ず「はやぶさ」までできるようにさせる。

・ノートは必ずとらせる。

・字を丁寧に書かせる。

・式は中間も必ず書かせる。

・テストの見直しは最低3回以上行わせる。(できれば5回以上 )。

・難しい計算は、きちんと筆算をさせる。

・作文は必ず最後の行まで書かせる。

・毎日の宿題は必ず提出する。(ことわざ、四字熟語、慣用句など言葉の学習)。

これらを毎日丁寧に行うと、子ども達の学力(リコーダー、なわとびも)はものすごく伸びてきます。そうなったときに、「ねっ、努力すれば必ずできるようになるでしょ!」と言葉をかけると、子ども達は大きくうなずき、それからは努力するのが当たり前になります。そして、できないときは、素質や才能がないからできないのではなく、努力しないからできないのだと理解してくれます。

努力してもできない子はどのように指導するかと思われることでしょう。私は、未だに、努力してもできない子に会ったことがありません。努力の総量のちがいで、結果に差はあっても、努力した子が伸びなかった例は一度もありません。

もし、できないままの子がいたとしたら、教師の努力が足りなかったということです。

私は、教師が努力すればできない子でも伸びる子という結果を知っていますので、どんなにできない子や大変な子が来ても、決してあきらめません。

「必ずできるようになる」という教師の熱意が、子ども達の意欲や自信につながっていくのです。

ただ、誤解しないでほしいのは、やみくもにやれとか努力しろと言っても子ども達は伸びないということです。言葉のかけ方や指導の方法をいろいろと努力して工夫していく必要があるのです。