幼児期の教育
幼児期という時期は、大人への依存と信頼を基盤として情緒を安定させて自立に向かう時期であり、その過程で、幼児は、生活や遊びの中で具体的な体験を通して、社会で生きるための最も基本となることを獲得していく。
このような幼児期は、生涯にわたる人間形成の基礎が培われる極めて重要な時期であるとも言える。
この幼児期の教育を支えるために重要な役割を果たすものは、親子のきずなの形成に始まる家族という親しい人間関係の場としての家庭であり、また、同年代の幼児が一緒に過ごす集団生活の場としての幼稚園等の組織や施設であるといえる。
さらに、地域の身近な生活において、子どもに様々な人々との交流や豊かな体験を提供している社会教育施設や各種の社会教育関係団体・グループ等がある。これらを踏まえて、幼児期においては、地域社会の中で、特に、家庭と幼稚園等が十分な連携をとりながら、幼児一人一人の望ましい発達を促していくことが大切である。
幼児教育の変化
近年、劇的な社会的変化により、地域において一緒に遊ぶことができる子どもの数の減少、親の過保護や過干渉、育児不安等の問題が指摘されているとともに、女性の社会進出が進むなど幼児を取り巻く状況が刻々と変化してきている。少子化、相対的な女性の社会的地位の上昇、都市開発による遊び場の減少、技術の進歩による遊びの内容の変化等その背景は時間の流れと共にあるものといえる。
このように、少子化、核家族化、女性の社会進出の拡大などの社会の変化が幼児を取り巻く環境、ひいては幼児自体に対しても著しい影響を与えており、これに伴い、保護者と地域のニーズの多様化が進んでいる。そのため、幼稚園の役割としても社会的変革、時代の流れに沿った変化が必要になってくるべきである。
幼稚園教育について
まず、その多彩なニーズに対応した入園児幅の拡大が挙げられる。
近年、少子化や地域社会の変容が進行する中で、遊び相手や集団活動を求めて低年齢から短時間の集団保育を望む保護者の要望の高まりが見られること等を考慮して、制度的には従来から可能であった満三歳児に達した時点での幼稚園入園について、幼稚園就園奨励費の補助対象化や私学助成費の適用拡大の措置が行われている。
これにより、児童を預けられる家庭の幅が増え、多様な形態の家庭の児童が入園可能になってくるであろう。それに伴って、幼稚園の保育形態も、望ましい教育内容・方法・留意点等、多様な変化をしなければならなく、状況に応じた保育を展開・提供を図ることが重要であると思われる。それに付随して、幼稚園が実りある保育実践をしていくためには、個人の活動、グループでの活動、学級全体での活動等が多様な形態で展開されることが必要である。また、幼児の直接的・具体的生活体験を豊富なものとするため、自然体験や社会体験のために園外に出かけるなど、園内外を視野に入れた多様な保育実践も求められている。
このような背景の中で、多くの幼児が散開したり、同時に並行し、流動的な遊びなどの諸活動を、一人の教師がすべて把握するという考え方は難しく、学級を基本としながらも、その枠を越えた柔軟な指導方法をとることが必要であると思われる。また、幼児はかかわる相手に応じて様々な側面を見せることから、複数の教師が協同して保育にあたり、幼児一人一人の良さや可能性がひらかれていくようにすることも大切であろう。すなわち、具体的には園長を中心に、幼稚園全体の協力体制を高め、細部まで指導の行きわたった工夫を図ることが必要となり、複数の教師が協同して保育にあたる、チーム保育の導入・実践が必要であると思われる。
さらに、幼児自身を取り巻く環境の変化を踏まえ、教師の様々な役割の中で、三歳児や障害のある幼児等特別な教育的ニーズを有する幼児に応じられる専門性、幼児の健康や医学に係る知識、保護者とのかかわりにおけるカウンセリングマインドなど教育相談に応じられる専門性、学校教育や生涯発達の見通しをもった幼児期の教育の専門性など、各分野での知識を有する教師も必要不可欠になってくるであろう。
小学校との連携
小学校との連携も重要視されてきている。幼稚園教育と小学校低学年段階の教育においては、幼稚園と小学校が連携し、幼児期にふさわしい主体的な遊びを中心とした総合的な指導から、児童期にふさわしい学習等の指導への移行を円滑にし、一貫した流れを形成することが重要であると思う。そのためには、幼稚園、小学校のそれぞれの教員が共通の子ども理解をもち、互いの教育に対して理解を深めることが必要であると思う。
家庭環境も時代の変化に伴って変わってきている。しかしながら、この時期の幼児は身長や体重が伸び、生活習慣への配慮が非常に重要であるといえる。早寝・早起き、ほぼ決まった時間に食事をとること、たくさん身体を動かすことなど、生活リズムの基礎をつくることが重要である。家族みんなで望ましい生活習慣や食習慣について学ぶ機会を積極的に持ち、実践することが大切であると思う。
しかし、このような状況とは裏腹に、家庭によっては既製品や外食の利用など、食事を外に依存する状況や機会が増えている。身体づくりの基礎となる時期だけに、安全な食材、健康・成長に配慮した食材を利用した食事が必要である。また、社会的変革による親の生活時間帯の変化による就寝時間の変化も好ましくなく、規則正しい生活を送ることが何よりも重要であり基本であると思う。
幼児期の教育を充実するためには、幼稚園教育の充実とともに、幼児期の家庭教育、地域社会における教育については、家庭教育の重要性について見つめ直し、考える機会を提供することや、体験活動の機会を子どもに提供することなど地域で子どもを育てる環境を整備することにより、家庭での教育も正しく矯正し、家庭・地域・幼稚園と、相互に高めあい連携しあう教育が必須である。