正確な児童理解
正確な児童理解は教育現場で発生する様々な問題を未然に防ぎ、また、現段階での問題点を的確に理解・対処する上で非常に重要になる。
問題のみがクローズアップされると、何を基準として問題となっているのかが見えにくく、問題行動のみが強調されると、その場しのぎの対応になってしまいがちであり、子供たちが本来どのように成長していこうとしているのかが見えなくなってしまう。したがって、正確な児童理解によって、「いじめ」・「不登校」・「心身症」・「学級崩壊」等の問題を直視し、健康な発達のどの部分がかけている為にこれらの問題が発生しているのかを見抜くことが必要である。
アセスメント
児童理解の情報収集の一例にアセスメントというものがある。アセスメントとは、何らかの意思決定の基盤となる資料作りのプロセスであり、教育アセスメント・心理アセスメント・医学的アセスメントがあり、それぞれの情報を元に援助サービスや個人教育プログラム(IEP)が組まれていく。学校における援助サービスは「第一次予防:啓発」・「第二次予防:早期発見」・「第三次予防:治療」の3段階があり、心理教育アセスメントは、それぞれの援助サービス内容を決定するために行われる。
つまり、援助の対象となる児童・保護者・教員・学校・地域等それぞれのニーズを「見立てる」ために行われる。「誰の何が問題なのか」を的確に「見立てる」ことによって、有益な援助計画を立てることができ、自分自身が何をすればよいのかが見えてくる。
学校で活用できるアセスメントには観察法・面接法・心理検査法がある。
観察法
観察法による児童理解は、行動観察・情報の分析・援助計画と進む。注意する点は主観的な観察をしてしまうと、適切な援助計画が立てられなくなるので、観察をする場合は客観的な指針となる視点が必要となる。また、作品(絵・図工の作品・作文・詩等)を観察することによって児童の状況をアセスメントすることもできる。
作品を観察する場合は、児童の内的世界が投影されやすいので、「いつ・どのような状態で・何を」作ったのかを把握しておく必要がある。1つの作品のみでアセスメントするのではなく、ほかの作品との一連の流れを理解していくこと、作品を観察するときは「何を表現したいか」を理解する姿勢が大切である。
面接法
面接法による児童理解は、言語を用いた会話での面接と非言語的な面接(遊戯)の2つの方法がある。面接により情報収集を行う場合には、リラックスし、信頼できる雰囲気をつくり、相手がわかりやすい言葉を用いる面接官の態度・何を目的としているかを伝え、相手との理解合意を図る面接の目的の明確化・話された情報がどのように援助に用いられるか、誰と分かち合われるかについての情報の使用方法の明示といった点について注意が必要である。
心理検査法
心理検査法では児童の心理状態を的確にアセスメントし、援助計画を立てていくアセスメントであり、「何を測りたいか」を明確にし、「どの心理検査をもちいるか」を選んでいく。多方面から児童理解を図るためには、複数の心理検査を実施して結果を比較・検討することが有用である。心理検査法の活用としては、進路指導における適性検査・エコグラム・文章完成法を通して自己理解のために用いる啓発的な活用法、問題の早期発見のために用いる予防的な活用法、援助計画を立てる上で児童の心理状態をより的確に査定したい場合に用いられる診断的な活用法がある。
このように情報収集の方法は多種多様にわたるが、教員として重要なのは、収集された教育・心理・医学的データを理解し、教育場面に活用することである。
児童理解は必要不可欠なものではあるが、その分類の特性上、教員一人で理解・解決することは難しく、専門的な知識の必要な場面もあり様々な状況での児童の情報が必要なため、専門家をはじめ、児童の親・兄弟・周囲の友人・地域の人々・その他の教師等に協力してもらうことにより、より多くの情報によって、より正確な児童理解をするべきである。