学校制度の移り変わり




古代の学校制度

古代の学校教育制度は702年(大宝2)の大宝令によって定められた学制であり、中央に大学、地方に国学を置くことになっていた。大学は学生400人を限度とし、諸王および五位以上の子孫、東西史部の子をもって入学資格としていた。

教官は博士1人,助博士2人,音博土2人,書博士2人,算博士2人があり、大学の学科は,紀伝道(歴史,文学)・明経道(修身政治経済)・明法道(法律)・算道(算術)の4道に分かれ,ほかに書道などがあった。国学は主として地方郡司の予弟が学んだ。大学・国学はともに試験があり,その成績によって役人に撰挙された。これらの古代の学校制度は,主として漢・唐代の中国の学校制度を模してつくられたもので,国家の官僚養成を主たる目的としたものであった。




中世の学校制度

中世に入ると武士の権力が増え、武士は戦士として学問よりも心身の鍛練,武芸の錬磨を重視したから,社会機関としての学校を設けなかった。読・書・算などの初等教育は寺院の世俗教育として行われていた。

近世封建社会の学校は大別して武家の学校である藩校と庶民の学校である寺子屋とに分かれ,このほか,郷学・私塾などがあった。

藩校は幕藩体制の成立期に家臣・領民への教化を目的として設立され,中期以降は幕藩体制の動揺とともに幕藩政改革の一環として,人材育成・風俗匡正を目的として相次いで設立された。当時の唯一の大学程度の教育機関は幕府の直轄学校とし,1797年(寛政9)に設立された昌平坂学問所がる。

教育内容は読・書・算・修身が中心で,のちに社会科・職業科の内容も加えられた。また近世後期には洋学・医学・兵学などを教える塾が現れ、郷校は在郷に設立された学校で藩の援助・奨励によるものと民間有志の手になるものとがあり,近世後期には広く普及した。

近代・現代の学校制度

近代・現代の学校制度は、戦前の複線型(分岐型)から、戦後アメリカの影響を受けた教育改革により、単線型になっている。基本は小学校-中学校-高等学校-大学(6-3-3-4)という単線型となっているが、学習者の選択肢を多くし、学校系統の多様化が図られている。

幼稚園

年齢順に述べていくが、幼稚園は、幼児のための文部科学省の所管する「教育施設」であり、3歳児から5歳児を対象としている。また、就学前の乳児又は幼児を対象として、厚生労働省が所管する福祉施設が「保育所」である。幼稚園の保育は、4時間が標準とされており、保育内容は文部科学大臣の定める幼稚園教育要領に従っているが、その基本は環境による教育、遊びを中心とするものが基本である。

小学校

小学校「初等普通教育を施すことを目的」として設置される義務教育学校であり、国、地方公共団体、学校法人が設置している。学校の管理と経費負担は、学校教育法によりその設置者に委ねられるが、義務教育学校については、その国民形成における共通性の確保や教育水準の維持向上のため、国や広域地方公共団体としての都道府県が権限と責任を分担している。小学校の教育課程は、学習指導要領に基づき、教科(国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図工、家庭、体育)、道徳、特別活動、総合的な学習の時間によって編成さている。

中学校

義務教育9年間の、前期中等教育を担う義務教育学校としては、中学校が設置されている。中学校は、初等普通教育機関としての小学校教育を基礎に国民として必要な資質の育成、職業についての基礎的な知識、技能や勤労の尊重、進路選択能力の育成、社会的活動による感情の統御と公正な判断力の育成を目的としている。公立中学校の管理は、その設置者たる市町村の教育委員会に委ねられているが、教職員管理(人事行政)と教育課程管理(指導行政)を中心に国(文部科学省)と都道府県(教育委員会)が重層的に権限を行使している。教育内容については、学習指導要領の基準性や教科書検定の枠組みを基本、に学校の裁量により決定されている。

高等学校

次に9年間の義務教育に継続する単一の後期中等教育を担う機関として設置された高等学校がある。高等学校の制度自体が多様化しており、授業の開設形態による全日制・定時制・通信制、修了認定形態による学年制・単位制などと学習者のニーズ、状況に応じた教育の提供を行っている。

その他

複線の派生としては義務教育後の5年一貫の技術系教育機関として高等専門学校、前期中等教育と後期中等教育(計6年間)を一貫して施す中等教育学校が挙げられる。

大学についてだが、学校教育法においては短期大学・大学院と合わせて一つの学校種となっており、入学・在学に年齢は設けておらず、幅広い知識の獲得が可能になっている。

このように近代以前と現在の学校制度を比較すると、年齢制限・教育内容が複雑化・細分化されている、学校自体の管理制度が多様化により地方分権化が進んでいる、義務教育の無償化とそれによる就学率の向上を基盤とした義務教育年限の延長による高学歴化といった差異が見て取れる。