介護等体験について




介護等体験とは

・文部科学省が実施した、教職課程のカリキュラム変更によって、平成10年から新設された、新たな教職課程科目(「教科または教職に関する科目」)です。

・義務教育である、小学校免許や中学免許を取得希望の学生に対しては、必修となっています。

・幼稚園免許や高校免許・栄養教諭免許を取得希望の学生に対しては、「選択」となっており、必ずしも、介護等体験を行う必要はありません

・養護教諭免許(小中高の保健室の先生の免許)を取得希望の学生に対しては、介護等体験は免除となるため、介護等体験の履修は一切不要です。

→養護教諭免許を取得するうえで、文部科学省が必修としている、病院での看護実習(校外実習)が、介護等体験とほぼ同等の体験にあたる、とみなされているため。

選択例

・幼稚園免許のみ取得希望→選択
・幼稚園と小学校の2つを取得希望→必修
・小学校と中学の2つを取得希望→必修
・小中高の3つを取得希望→必修
・中学と高校の2つを取得希望→必修
・高校免許のみ取得希望→選択
・栄養士+中学、高校、栄養教諭免許の3つを全て取得希望→必修
・栄養士+中学免許と栄養教諭免許の2つを取得希望→必修
・栄養士+高校免許と栄養教諭免許の2つを取得希望→選択
・栄養士+栄養教諭免許のみ取得希望→選択
・養護教諭免許(小中高の保健室の先生の免許)のみ取得希望→一切不要




介護等体験の目的

・多様な人間の存在とその価値、考え方の違いを認識し、人間に対する理解を深める。

・「個人の尊厳」や「人権」について考え、理解を深める。

・「共生」や「社会連帯」について考え、理解を深める。

・多様な人との交流を通じて、コミュニケーションの重要性や方法を学ぶ。

・対人援助の実際に触れて、人間関係形成の重要性、姿勢や方法等を学ぶ。

・利用者が抱えている生活課題の背景にある社会的な問題や市民生活を支える制度についての理解を深める。

関する法律

小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例法に関する法律 (略称:介護等体験特例法)

第一条 この法律は、義務教育に従事する教員が個人の尊厳および社会連帯の理念に関する認識を深めることの重要性にかんがみ、教員としての資質の向上を図り、義務教育の一層の充実を期する観点から、小学校又は中学校の教諭の普通免許状の授与を受けようとする者に、障害者、高齢者等に対する介護、介助、これらの者との交流等の体験を行わせる措置を講ずるため、小学校及び中学校の教諭の普通免許状の授与について教育職員免許法(昭和24年法律第147号)の特例等を定めるものとする。

☆厚生労働省の通達では、

介護、介助のほか、障害者等の話し相手、散歩の付き添いなどの交流等の体験、あるいは掃除や洗濯といった、障害者等と直接接するわけではないが、受け入れ社会福祉施設の職員に必要とされる業務の補助など、介護等の体験を行う者の知識・技能の程度、受け入れ施設の種類、業務の内容、業務の状況等に応じ、幅広い体験が想定されること

となっています。

※そのため、「必ずこれを体験しなければならない」という決まりごとはありません・・・。

→介護等体験は、「介護等の専門技術や、福祉の専門知識を身につける」ということが目的なのではありません。

介護等体験では、教師を志す学生が、将来、学童・生徒の教育に携わるため、介護等体験を通して「自分自身」を見つめ直し、自らの課題を発見するとともに、介護等体験で得た経験を教育現場で生かすことが期待されます。

介護等体験の流れ

・教職課程のある大学や短大(どちらも、夜間部や通信制も含む)が、4~5月に、
都道府県社会福祉協議会、および、都道府県教育委員会に、実習希望者全員分を一括申込申請する。

ア)都道府県社会福祉協議会が、福祉施設と連絡をとりあい、A施設で実習するのは○人、B施設で実習するのは○人、といった人数振り分けや、実習期間(6月~翌年2月までの中での平日連続5日間)を調整し、

大学・短大へ
(例)
「・学生のAさんには、12月2日~6日まで、知的障害者福祉施設××で体験を行っていただきます。
・学生のBさんには、8月23日~27日まで、児童福祉施設○○で体験を行っていただきます。
・学生のCさんには、1月24日~29日まで、特別養護老人ホーム△△で体験を行っていただきます。
・学生のDさんには、9月16日~20日まで、身体障害者福祉施設□□で体験を行っていただきます。
・学生のEさんには、11月15日~19日まで、デイサービスセンター☆☆で体験を行っていただきます。(以下略)」
と、通知します。

イ)都道府県教育委員会が、特別支援学校と連絡をとりあい、C支援学校で実習するのは○人、D支援学校で実習するのは○人といった人数振り分けや実習日程(6月~12月までの中での平日2日間)を調整し、

大学・短大へ
(例)
「・学生のAさんには、9月14日と15日に、××北支援学校で体験を行っていただきます
・学生のBさんには、10月18日と11月27日に、××南支援学校で体験を行っていただきます
・学生のCさんには、7月12日と13日に、××北支援学校で体験を行っていただきます
・学生のDさんには、6月24日と11月13日に、西××支援学校で体験を行っていただきます(以下略)」
と、通知します。

大学・短大は、都道府県社会福祉協議会、および、都道府県教育委員会からの指示にもとづき、学生を施設や特別支援学校へ行かせて、介護等体験を行わせる。

・・・というシステムになっています。

そのため、

1)学生が個人で、実習する施設や特別支援学校を探す必要は一切ありません。

2)学生が、大学・短大を通さず、個人で勝手に、直接、都道府県教育委員会・都道府県社会福祉協議会・施設・特別支援学校へ、介護等体験の実施希望の申し込みをしても、はじかれて一切受付されませんので、そういった方法で、個人的に介護等体験を行うことは、一切できません。

3)大学や短大が、コネなどで、勝手に、施設や特別支援学校を紹介することはありません。

4)学生が、実習の希望日を指定することは出来ません。

5)学生が、「家の近所にある、特別養護老人ホーム○○園で、介護等体験をしたい」などと、施設や特別支援学校をピンポイントで指定することは出来ません。

※大学・短大は、4~5月あたりの土曜日などに、「介護等体験事前指導」を開講し、

・福祉施設や特別支援学校に関する知識
・介護に関する知識

などを、学生に学ばせる事前学習の機会を提供しています。

注意事項

文部科学省は、「介護等体験事前指導の全ての時間に、きちんと出席した、やる気のある学生のみ、介護等体験への参加を許可する。」
・・・としています。

文部科学省や、大学・短大にとっては、介護等体験を受け入れてくださった施設や特別支援学校から、クレームの電話がかかってきて、「おたくの大学(短大)の学生は、今後一切受け入れいたしません」・・・ということになってしまうのが、一番困るわけですね。

そのため、事前指導を受講して、介護などに関する基礎的な知識を、きちんと学習した学生しか、介護等体験に行かせないシステムにしているわけです。

ですから、1回でも、介護等体験事前指導の遅刻・欠席をした場合は、大学、短大が、土曜日などに行う遅刻者・欠席者のみを対象とした特別補講に、きちんと参加する。

そういったフォローを一切実施していない大学、短大であれば、その場合、介護等体験の履修登録が、自動的に、取り消し・履修中止・履修停止、となりますので、次年度再履修確定、となります。

また、大学・短大は、7日間の介護等体験が全て終わった、翌年2~3月あたりの土曜日などに、「介護等体験事後指導」を開講し、

・体験を通して、どんなことを学んだのか?
・学んだことを、今後の人生で、どのように生かしていくのか?

・・・といったことを、学生に考えさせる、まとめ学習の機会を提供しています。

→そのため、「介護等体験(事前・事後指導含む)」は通年科目扱いとしている大学・短大が多いです。

実習場所

介護等体験の実習場所は現住所と帰省先によって変わってきます。

(例)東京の大学に通うために、一人暮らしをしている。

実家は青森県である。

・「大学・短大の所在地の特別支援学校で介護等体験を行うこと」となっているため、
→東京都の特別支援学校が指定されます。

・「学生の帰省先都道府県の社会福祉施設で介護等体験を行うこと」となっているため、
→青森県の福祉施設が指定されます。

・・・という風に、細かい基準があります。

そのため、特に10月入学(通信制大学など)の場合は、大学・短大の所在地の教育委員会や、帰省先都道府県の社会福祉協議会が、上記のような「介護等体験の申し込み受付は、4~5月の年1回のみ」としている場合、翌年の4月にならないと、介護等体験の申し込みができません。

※施設や特別支援学校の受け入れ状況によっては、現在お住まいの(帰省先の)A区市町村の、隣のB区市町村や、さらに隣のC区市町村 の施設や特別支援学校が指定される場合もあり、とても通えそうにないのでやむをえず、ビジネスホテルやペンションを予約した・・・、 といったことが起こる場合もあります。必ず地元で介護等体験ができるとは限りません。

なお、このような場合であっても、宿泊費など、かかる費用は全額、学生本人または家族の自己負担となります。

注意

実習先の福祉施設や特別支援学校には、「必ず実習生を受け入れなくてはいけない」といった義務は一切ありません。あくまでも、「実習先福祉施設や特別支援学校のご好意で、実習させて頂く」ということになります。そのことを忘れないようにしましょう。

教育実習とは違い、介護等体験は、前年度からの申し込みや手続きは、一切不要です。

そのため、(例)3年次編入の場合、3年生4月に、介護等体験の申し込みをする。3年生の6月~翌年2月に、介護等体験を実施する。ということが可能です。

ポイント

・福祉施設や特別支援学校によっては、体験期間の前に、事前オリエンテーションを実施する場合があります。

・福祉施設や特別支援学校によっては、事前オリエンテーションなどは特に何も実施せず、電話連絡や郵送での書類のやりとりのみ、という場合もあります。この場合、介護等体験の初日に、初めて、福祉施設の担当職員や特別支援学校の担当教諭と顔を合わせる、ということになります。

・介護等体験は、各都道府県社会福祉協議会で発行している「介護等体験マニュアルノート(○○都道府県版)」、あるいは、「介護等体験ガイドブック(○○都道府県版)」に、「介護等体験修了証明書」という文部科学省指定の書式の用紙が挟み込まれており、それを切り離して使う。または、大学・短大で、文部科学省指定の書式に沿って厚紙に印刷した証明書用紙を用意しています。

そして、その指定の用紙を、施設や特別支援学校に持参し、最終日に、施設長や校長に必要事項を全て書いてもらって、

「特別養護老人ホーム○○長の印」
「知的障がい者施設○○長の印」
「身体障がい者施設○○長の印」
「児童福祉施設○○長の印」
「○○県立○○特別支援学校長の印」

という感じの四角い公印を押してもらい、小学校免許や中学免許の発行申請手続きを行う際に、各都道府県教育委員会に提出するというシステムになっています。

そのため、文部科学省指定の書式の用紙を持参するのを忘れた、あるいは、なくしたからといって、レポート用紙やメモ用紙など別の用紙に、「この者は、介護等体験を済ませました」と書いてもらっても、それは、正式な証明書としては一切認められませんので、それを提出しても、小学校免許や中学免許を取得することはできません。

・基本的に、いかなる事情があっても、原則として「介護等体験修了証明書」の再発行はできません。証明書の保管や管理には、十分注意して下さい。

・「科目等履修生の介護等体験の履修は、卒業生に限ります」「科目等履修生の介護等体験の履修は、卒業生を含め、一切認めません」
・・・といった何らかの履修制限を実施している大学・短大が多いです。

そのため、卒業した大学・短大以外で、介護等体験を履修するには、通信制大学へ3年次編入するか、通信制短大に1年次入学する必要があります

単位について

文部科学省は、「小学校免許や中学免許を取得希望の学生については、必ず、介護等体験を実施させなさい」としていますが、教育実習とは違い、「学生に、必ず、介護等体験の単位を、与えなさい」とは、一切、指示していません。

そういったこともあり、小学校免許や中学免許の発行申請手続きを行う際、施設や特別支援学校に持参し、必要事項を全て書いてもらった、「介護等体験修了証明書」の提出は、必要ですが、大学・短大が発行した、介護等体験の単位を修得したことを証明する証明書の提出は、一切不要です。

介護等体験への参加が免除となる者

・中学免許所持者が、小学校免許を追加取得する場合
・小学校免許所持者が、中学免許を追加取得する場合
この場合は、「介護等体験修了証明書」の代わりに、所持している該当の教員免許状のコピーを提出すればOK。

※ただし、教育職員免許法第5条別表1「教員免許の新規取得」の規定にもとずき、小学校免許や中学免許を取得した場合のみが対象です※

→例えば、教育職員免許法第6条別表3や別表8、あるいは、教育職員免許法第16条の2「小学校教員資格認定試験」による取得の場合は、一切対象外となるため、介護等体験は必修となります

・2種免許所持者が、1種免許を取得する場合
・教育職員免許法第6条別表4「他教科免許の追加取得」の規定にもとずき、
他の教科の中学免許を追加取得する場合
・教育職員免許法第6条別表8「隣接校種免許の追加取得」の規定にもとずき、
小学校免許や中学免許を取得する場合

・小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例法に関する法律 (略称:介護等体験特例法)第二条第三項の規定により、介護等体験を必要としない者

「保健師」「助産師」「看護師」「准看護師」「特別支援学校教諭免許(☆)」
「理学療法士」「作業療法士」「社会福祉士」「介護福祉士」「義肢装具士」
の10種類の資格・免許のうち、どれか1つ以上を所持している者

この場合は、「介護等体験修了証明書」の代わりに、所持している資格証・免許証のコピーを提出すればOK。

教育職員免許法第5条別表1「教員免許の新規取得」の規定にもとづき、2週間の、特別支援学校での教育実習を実施して、特別支援学校教諭免許を取得した場合のみが対象です。

・身体障害者福祉法第15条第4項の規定にもとずいて交付された身体障害者手帳を所持しており、障害の程度が1級~6級と記載されている者

この場合は、「介護等体験修了証明書」の代わりに、身体障害者手帳の必要事項が書かれているページのコピーを提出すればOK.。

※これらの条件に当てはまり、介護等体験への参加が免除になる者であっても、
希望すれば、介護等体験へ参加し、「介護等体験修了証明書」をもらうことが可能です。

※「ホームヘルパー」「介護職員基礎研修」「介護職員初任者研修」「実務者研修」「精神保健福祉士」「社会福祉主事」の資格・免許は、どれも対象外。介護等体験への参加が必要となります。