幼児期の人格形成
幼児期は人格形成のもっとも重要な時期だといわれている。幼児期は幼児を取りまくさまざまな環境からの刺激を受けて発達する。人生の生涯にわたる発達という観点から幼児期の過ごし方を据えてみると 外見上の発達をいくら急いでもその時期に必要な経験を十分にしていないと後の人間形成に問題を残す可能性があると言われている。
具体的には、幼児期に興味・関心を無視して知識・技能を教えこまれると 小学校に入ってから、子どもの学習意欲を損なうことになったり、幼児期に友だちとのふれ合いを十分に経験する機会を得られなかったことが思春期になってから人間関係の上で様々な問題を引き起こす場合もある。
そのため、幼児の望ましい成長発達を手助けするために、幼稚園と家庭がお互いの立場や生活などを理解し合い、同じ幼児を思うものとしての心のつながりを持ち、幼児のために力を合わせる必要がある。これは家庭のみ、園内のみといった片側だけの対応や、個別にそれぞれが子供に働きかけても十分な効果や成長といったものは得られない。家庭での問題を園内の教師を含め、全員で解決する、といった姿勢が必要である。
例えば、家庭からの相談として「人の話を聞くことがあまりできない」や「人前でうまく話せない」といった事例に対して、幼稚園では教師との信頼関係を基盤にしながら、遊びを中心として友だちと楽しく集団活動を送る場で、充実した集団生活を展開することにより、他人とのコミュニケーションを体験的に学び、成長させることができる。
また、「好き嫌いが激しく、野菜が食べられない」という相談に対して、園行事(誕生日パーティーなど食事をする機会のあるもの)などを企画し楽しく仲間と食べることによって苦手意識をなくすこともできる。
近年では子育ての母親任せの相談も見受けられるので、園としての父親の参加を促す工夫や場の設定、先輩親の子育ての話を聞くことで参考になると思われる。
このように幼稚園生活では 父母と行事を通して触れ合う機会が多く、園行事を通して父母と教師が相互理解し信頼関係を築いていくことができ、父母の協力を得ることで幼児の成長発達をより望ましいものにすることができる。
当然、園内だけでなく幼児にとっては家庭の役割も重要である。家庭は家族から十分な愛情や思いやりを受けて安心して過ごせる心の基地といえる。幼児は依存して安心して過ごせる家庭生活を通して、愛情や思いやりの大切さ、生活していくために必要な基本的な生活習慣などを自然に身につけ、精神的にもまた基本的生活習慣の上でも次第に自立していく大切な場である。
幼稚園と家庭
幼稚園と家庭のつながりは、一人一人の幼児の育つ姿に触れ、喜びを分かち合うことを通してより強められる。
幼稚園は父母が安定した気持ちで幼児の成長を温かく見守っていけるようにし、そのために幼稚園生活の中で成長していく一人一人の幼児の姿を担任が十分把握し、家庭訪問・個人面談・保育参観・その他父母が園に来る機会を通して父母に具体的に伝えていくことが重要である。
父母は教師の話を聞くことにより、幼児が楽しい園生活の様子やわが子の育ちを見て子育ての楽しさや喜びを味わうことで子育ての意欲にもつながる。
面談などは父母と直接話す重要な場であるため教師との信頼関係を築く上で大切な時間といえる。幼児のよい面や伸びる可能性に視点をあてて話し合い、父母の不満や苦情は気を付けて様子を見て、プラスの方向に向ける努力をする必要がある。
このように幼稚園と家庭が一人一人の幼児の成長する姿を共に喜びながらその幼児のために、何をどのようにすることが大切か一緒に考えていくことによって相互の信頼関係が築かれる。
その一方で、家庭にはそれぞれの生活や事情があり、園行事や園への協力など楽しみにしている家庭もあれば、出席や協力したくてもできない家庭もあるはずである。教師はそれぞれの家庭の事情を十分理解して、協力してくれる家庭も協力できない家庭もどちらも大切に考え、家庭に過度な負担をかけないようにしなければならない。
よい関係性を気付くために
大切な点は、教師は保護者を指導するというのではなく、謙虚な気持ちでその気持ちを十分に聞き、ともに学び育ち合うよう努める多様な価値観を受け止めることが必要である。
また、相手の立場に立って保育参観や個人面談などで父母の立場を尊重した話し方や相手が知りたいこと聞きたいことをわかりやすく伝えたり、安心して幼稚園に児童を託すことができるように父母の気持ちを受け止めて、なるべく丁寧に具体的に父母の心に届くように対応すべきである。
このように互いが互いのことを思えるような関係を相互に築けるよう努力することにより、大切な一人一人 幼児を中心に据えて幼稚園と家庭が力を合わせ幼児の生活を充実したものにしての発達を促すことが大切である。