社会科指導の留意点




目標の明確化・具体化

教材研究は、単元目標や内容を構成する作業を含めたものと考える。目標・内容・教材は一連のものであるので、教材研究の一環として目標や内容の研究また、目標の明確化・具体化も同時に行っていく。

目標の明確化とは、社会科の教科目標から、学年目標へ、さらに単元・小単元・題材の目標へというように、細分化・分析し、それぞれの目標を関係的に把握することである。教材の選択や作成、学習過程の構成や実際の指導に関わっていく重要な事柄であり、社会科目標間の関係だけでなく、他の時間の目標も考慮し、明確にしておきたい。

目標の具体化とは、明確にされた目標が児童に実現される形で具体化されることで、1単位時間の目標を児童の実態に対応させて到達できる目標とするものである。目標の達成は、行った学習によってわかるのも含めて、具体的な行動ができることと考えるもので、目標の具体化は児童の可能な行動を目指す形として設定する。




地域社会の調査と研究

社会科は児童の生活経験を重視する教科であるため、目標に照らして、児童が日常生活で体験したり見聞きしている地域の素材を教材として活かした単元の構成が必要である。

そのため、地域社会を的確に把握するとともに、教材になりうるような素材を豊富に収集するよう努力することが大切である。地域の直接観察や、調査をはじめ、協力が得られそうな人からの聞き取り、図書館や関係機関を利用した統計や文献などの資料収集を地域に関心を向けながら、常日頃から行い、教材をとらえる目を養いつつ素材を集めていくことを心掛ける。

多様な素材や資料の教材化

社会科は、社会的事物や事象を学習対象とするものである。学習素材や資料は、児童の周囲や自分の周囲にも多様に存在しているため、その中から指導内容の具体化に生かすことのできる教材を取捨選択し、学習過程に対応させて順序付ける必要がある。それは、興味・関心・知識・理解の方向で捉え、思考を刺激するような児童の問題意識や学習意欲の喚起ができるもの、分析し具体化した目標に対応し、指導目標を達成することのできる内容をもつ、といった点に重点を置き厳選していく。

教科書教材の研究

社会科は社会生活の事実を教材として取り上げるため、観察や様々な資料の活用を伴う学習が主流となる。教科書は教材の形として組織化されたものであり、その中に多様な資料が含まれているため資料集として活用することができる。

上手く活用するには、どの場面(導入・展開・終末)で、何を、どのようにということを問題視し、教科書の性格を把握することが大切である。一般に社会科の教科書は、教材が組織化されている教材としての一面と、一例が提示されている学習活動の方法提示としての一面との2つの側面を持っている。

この2つの側面があることを念頭に置き、どのような編集意図で構成されているのかを把握しておくと共に、単元に示されている教材が、何を狙ったものであるかとういうことを明らかにし、教材のねらいを明確化する、といったことが大切である。

また、地域や学校にあった教材にするために、教科書にない資料(教科書教材の弱点を補足する資料)を補充し、地域の調査や研究の成果、その学年用に編集された社会科資料集、地域に合った副読本などの資料を効果的に活かす工夫を行うことも大切である。教科書は一般化されたものであるため、過信せず、上述のような副読本などと効果的に組み替えて、場面に応じた教材の設定を行うべきである。

教師用指導書の活用

教師用指導書も教科書同様に活用するのが好ましい。つまり、教師用指導書の性格(一般的・平均的・総合的)を把握し、適時導入するといった形式をとることが大切である。教科書や、教師用指導書のみでなく、社会科の多種多様な教授題目に対応し、多種多様な教材を使用していくことが大切である。

また、その際に、設定した目標に沿って教材に対する理解の深化を行い、児童の具体的行動の可否について評価を行い、評価結果を再び教材研究にフィードバックするよう心掛け、思ったような結果が得られなかった場合は、授業展開と教材研究を見つめなおし、修正していくことを心掛けるべきである。