授業形態
ある方法や技術や形態は、授業の目標を効果的かつ能率的に学習させるための手段であり、その教師が最もよいと思う方法で教えたとしても、生徒に現実に学習が成立しなければ、その方法は有効適切な方法とはいえない。採用された方法なり技術が有効なものであったかどうかは、生徒が所定の目標を達成することができたかどうかという事実によって判断される。
評価は、授業・学習活動によって所定の学習が生徒にどの程度に成立したか、また、一定の目標を達成するために活動がどのように進められたかなどを知るためであり、それらを反省して、教授・学習活動や授業設計を改善するためのものである。
評価について
授業のどの段階で実施するかによって評価は、診断的評価・形成的評価・統括的評価の3つの種類に分けることができる。
診断的評価というのは、授業の開始前に生徒の既習事項や傾向、前提能力の状況や特性などを明らかにしようとするものである。
形成的評価は、授業過程の中で、指導の方向や方法を修正したり確認しりするために行うもので、目標を達成するための学習上の躓きをすばやく看取し、これを適切な指導にするための評価である。
総括的評価とは、あるまとまった学習活動の終わりに、生徒の目標達成の状況や指導の成否などを総括し、その後の授業の設計や実施への資料とするための評価である。
評価は授業の経過の全体にそって絶えず行われ、指導と一体化した関係にあると考えるべきで、評価は教師自身の指導のあり方に厳しく向けられるもので、教師の教え方の改善を迫るものである。また、授業の目標を具体的で明確な形で設定することにより、それ自体が評価の観点あるいは基準となり、教師側の責任において生徒に学習の成立を保障しすべての生徒に目標達成の喜びを得させる努力が必要である。
フィードバックの大切さ
生徒が自分の授業をどれくらい理解してくれているかは、教師が生徒について知るべき最も重要な情報のひとつである。以下の項目はそれぞれ評価であることには変わりないが、ただ単に成績に直結する評価ではなく、生徒・教師双方に効果的にフィードバックすることができる貴重な情報源として扱うべき項目である。
まず、授業中であるが、生徒にとってつまずきやすいと思われる個所にさしかかったら、生徒を指名して教師が述べたことを自分の言葉で言い直させる。これは、定義した概念を再度説明させ、その適用例を指摘させる、紹介した理論の反例をあげさせる、など、いろいろ応用ができる。
授業の終わりでは、質問カード、リアクション・ペーパー、ミニット・ペーパーなどを提出させ、授業のポイント、疑問、質問などを書いてもらう。また、授業の最後の5分ないし、10分を理解度の確認のための時間として位置づけ、この時間の中で生徒に質問したり、逆に生徒からの質問を受け付けることにより、生徒はこのような時間が確保されていることで安心する効果もある。
授業中での分岐としては、指名した生徒に授業の重要なポイントを含む問題を黒板で解かせ、その際に、生徒二人組を指名して一人の生徒を「助言者」とするということで、心理的な圧迫感を取り除く。また、授業以外で行う課題(宿題等)は、生徒の理解度を確認することのできるような内容のものにすることで適切なフィードバックを行う。
評価としては解答時間が10~15分程度の小テストをときどき実施し、テストという形での生徒の理解度を確認することに努める。
具体的事例
具体的事例として理科の実験授業「物の温まり方と体積」を例にとって述べる。
ここでは、空気、水、金属などを温めたり冷やしたりして、体積が増えたり減ったりすることをとらえるようにすること、金属は熱せられた部分からあたたまるが、水や空気は、熱せられた部分が移動して全体があたたまることを実験を通してとらえられるようにする。
まず児童に実験レポート用の用紙(またはノートでも可)を配るが、そこにはこの実験の結果はどのようになるのかを予想して書いてもらう。これは上記の診断的評価にあたる。これにより児童の既知の知識によりこの実験の結果がどうなるのかといった予想を把握することができる。具体的には金属の物質を温めると、体積は「おおきくなる」「小さくなる」「かわらない」の3種類に分類することができる。論理的考察により、他人に説明できる人間がいた場合は説明させることにより、発表能力の評価も行える。
実験授業の学習形態については、友達と情報交換しながら進められるようグループを編成し、その中でも、できる限り個別化が図れるよう実験器具を多く準備しておく。実験の最中としては、実験用具の使い方・留意点など細かな質問を通して診断的評価とする。
これにより実験の際の注意事項の確認とともに、児童自身の危険回避にもつながるため、評価の有無にかかわらず行っておかなければならない。本単元ではガスバーナーを使用するため、実験開始前にこの診断的評価による問答を通して、使用方法をしっかりと確認しておく必要がある。授業前の準備、授業中の使用方法、授業後の後片付けの可否を通して、実験道具の使用に関しての診断的評価とする。
最後にレポートのまとめとして、どのような結果となったのか、それはなぜか、を理解しているかどうか、また、どのような条件下でこの実験と同じ操作を行うと、実験同様の結果が得られるかをまとめてもらうことにより総括的評価とする。また、診断的評価の時点で把握した児童の既知の事柄と差異があった場合、なぜそのような結果になったのかを説明することにより診断的評価の価値が活かされる。
総括的評価を行うことにより、実際には行っていない作業も、今回の学習・評価により未知の作業・分野にも応用が利く結果を得ることができる。特にこの単元では、個体・液体・気体と3種類別々の温まり方があるため、一つの物質についての実験を終わった後のレポートにおいてまとめ、別の物質の温まり方ではそのまとめの考えをもとに結果を予想することで、総括的評価と診断的評価が相互に関係し、より一層単元の理解の深化が行える。