わかっていても手を挙げない子、ノートに考えや答えが書いてあっても発表できない子、分からない・ できないからと初めから考えようとしない子など、手を挙げない子にはいろいろなタイプがいます。
しかし、どれにも共通して言えるのは、挙手をしない子は伸びないということです。挙手をすれば、たとえ発言しなくても大きな力となります。挙手をするということは、発言するかもしれないというリスクを背負うことになります。
発言が苦手な子にとっては、ものすごく大きな葛藤を抱えながら、手を挙げているわけです。指名された時に一生懸命分かるように説明することを考えながら、どきどきして手を挙げているのなら、その間だけでもかなりの心の中で知的な活動が行われることになるのです。
挙手をしない子はこの知的活動が少ないです。それどころか、ボーっとしていたり、別な事を考えていたりするかもし れません。学力を伸ばしたいのなら、どんな問題にでも、間違えを恐れずに手を挙げ、真摯に答える態度 の育成が必要となるのです。
分かっていても手を挙げない子に対する指導
いくつかパターンに分けて例を挙げます。
①発表すること自体が、あなたのあらゆる力を伸ばすことになります。恥ずかしさをのりこえ、面倒な事を乗り越え、きちんと相手に伝えようと努力することを毎回 (たとえ指名されなくても)やろうとする意志をもつた人が伸びないわけないよね。手を挙げない君は、自分をどう成長させたいと思っているのですか?
②(ふざけ気味、挑発気味に。学級経営がうまくいっていないと逆効果になります。)
「そうか、うまく説明できないんだ…。やっぱり、わかるように言葉にするって難しいもんねぇ。」
③「恥ずかしいの?自信がないの?で もね、失敗しても、うまく言えなくても「よく頑張った」 「いいよ」って言ってもらえるのって、小学校までだよ。中学になったら、「小学校で何やってきたんだ」って言われるよ。大人になったら叱られて、給料が上がらなかったり、ヘタしたら辞めさせられてしまったりすることだってあるかもしれないよ。今のうちに、発表することに慣れちゃおうよ!」(六年生の、特に後半は効果が高いです。)
ノートに書いてあっても発表しようとない子に対する指導
まず、ノートには間違ってもいいから、必ず書かせる指導をすること。
「えーつ、ノートに書いてあるじゃない。それで手をあげないのは、①めんどうだ。②はずかしい。③先生の言うことは無視する。どれだい?どれでもおかしいよね。」(あとは、上の①の説明をします。)
また、ノートに書いてあるのなら机間巡視をして、良い考えを、または素晴らしい間違いを見つけましょう。それを大いに利用するのです。
指名して、強引に発表させて、正しいときは「 素晴らしい考えだ」 、 たとえ間違っていても「素晴らしい間違えだ」と大いにほめたたえます。スモールステップで自信をつけてあげましょう。
自分の考えをもてない、全く考えが浮かばない子に対する指導
「じゃあ、廊下に出て、話し合っておいで!自分の考えがもてたら教室にもどっておいで。アッ、これば罰じゃないからね。友達と話し合っていいから、まずはどんなに間違ってもいいから、自分の考えをもとうよ。」
その間は待ちます。授業は進めません。すると子ども達、見事にものの1分もかからずに教室にもどってきます。そうしたら、
「ふ―ん、廊下で考えると、真剣になるんだねぇ。今まではどうでもいいって思っていたのかな?ねっ、自分の考えをもつことは真剣に取り組めば、簡単にできるでしょ 。」
この方法は、使うのは難しい方法かもしれません。子ども達と厚い信頼関係を築き、なおかつ話術が絶妙でないと 『勉強ができないから、廊下に出されたんだ』と思われてしまうからです。
他には、 教室の後ろで相談してもいいという条件をつけて考えさせて、答えがもてたら着席さ せるという方法をとることあります。立つという行為は、子ども達を本気モード にさせるのです。
しかし、懲罰の意味でやってしまうと、 体罰になる可能性があるのと同時に、学習が苦痛になってしまうことにもなりかねません。気をつけてください。
また、2,3人の小グループを作つて集団として一つの考えをもつようにさせたりすることもあります。自分が廊下に出て、「自分の考えをもつた人は、他の人に聞こえないように廊下に教えに来て!」と言うこともあります。子ども達、内緒話のように私にだけ答えを話すのが楽しい
らしく、 答えが違つていても何度もチャレンジしてきます。このように状況によつていろいろな方法をとります。
これらの方法は、簡単な問いなのに、手を挙げない子がたくさんいるときに使います。手を挙げない子 が1人、もしくは数名のときには行いません。
また、難しい問題のときはしません。ただし、難度が高い問題のときでも自分の考えが容易にもてるはずなのに、難しいからわかるはずがないと考えることをあきらめてしまったり、 どうせ間違うから考えなくてもいいやと投げやりになったりする場合には行うことがあります。
大切なのは、正誤ではなくて、自分の理論で答えを導き出す力の育成であることを理解させる ためだからです。自分の意見をしっかりともつことの重要さに気がついてほしいのです。
こうやって、普段から、正誤に関わらず、自分の考えをもつことを習慣化する指導をしていると子ども達は本当によく考え、たくさんの意見を言ってくれるようになります。「廊下に行って考えておいで」なんて言わなくても、どんどん手が上がるようになります。
多くの子が挙手をするようになると、それまで手をあまり挙げなかった子も、自分も言ってみようかなと手を挙げる回数が増えてきます。
人に性格があるように、クラスにも性格があるのです。集団としての“ 傾向”です。手を挙げるのが当たり前という性格のクラスに変えてしまえばいいのです。授業が楽しく活発になりますよ。子どもたちも授業に参加している実感があるので、とても集中して理解度もあがります。