学校におけるカウンセリング
学校におけるカウンセリングには、機能的に「開発的カウンセリング」と心理的な問題解決を援助する「治療的カウンセリング」の2つに大別される。
開発的カウンセリングは、開発的ならびに予防的な目的で、児童・生徒の能力、人格、身体的・精神的などをより望ましい方向へ押し進めようとするものである。
この開発的カウンセリングをより広義にとらえることにより、学校における教師と児童・生徒の人間関係の深化、児童・生徒の学校生活への適応の援助活動として、教師が機能していくことが期待されている。そのためには、すべての教師があらゆる場で、カウンセリングの態度や方法を活かすこと(カウンセリングマインド)によって指導の質的な充実を図ることが求められている。
カウンセリングマインドとは
カウンセリングマインドとはカウンセリングの基本姿勢をあらわすカウンセラー(あるいは教師)の内面を象徴した造語で、教師の児童・生徒に対するカウンセリングの基本関係・態度を大切にする姿勢のことを意味している。受容・共感・自己決定の原則などの手法が大切であり、子ども達の問題行動が続いた時期に臨床心理学的手法がある程度有効だったことが造語背景ともなっている。細かく分類すると、個別化・意図的な感情表現・統御されて情緒的関与・受容・非審判的態度・自己決定・秘密保持などのケースワークの手法の大切さであり、これらをまとめて一般的に受容・共感・自己決定の原則が大切、という形となる。
カウンセリングの場でクライアントは自身が無条件で人間として大切にされ,信頼されることが実感できてはじめてカウンセラーとの間に信頼感が生まれ,自らのこころを開き,自らを語ることができます。つまり、そのための,カウンセラー自身が自己開示する姿勢が必要となり,このような信頼関係を築くための受容・共感・自己決定の態度をカウンセリングマインドとしている。
カウンセリングを行うときの態度や心構え
カウンセリングマインドが意味するカウンセリングを行うときの態度や心構えとは、教師が児童に接する上で具体的に次のようなことが挙げられる。
「子供の成長への衝動を尊重し可能性を信じる」これは受動的・限定的な詰め込み式の授業により子どもの成長の可能性の消失を避けるために重要な要素である。
「子どもの言動には、その子なりの真実がある。それを、その子の考え方・感じ方に立って理解に努める」主観的な意見を押し通そうとせず、まず聞くことから、そして相手が本当に思っていることを言いやすい場を作る過程から重要である。
「言葉でのふれあい以上に、感情的なふれあいを大切にする」わかりやすい、日常使っているような言葉で話したり、思いやりのある暖かい態度で臨むことにより、相互的で自然で抵抗のない人間関係を成立させることに努めるべきである。
「教え与えることに性急にならずに、自分で考える力が育つかかわりを工夫する」説教じみた話し方や、教えようとする話し方をしないことを前提に、子どもが積極的に授業に介入し、新しいことを発見する喜びを教える授業構成が大切である。
「子どもの自尊心を大切にしながら、一緒に考え、新しい発見や感動を共にしていく」可能な限り共感的な態度で接し、物事を教えるだけでなく教わることも多々あることを理解しておく。
「子どもをどれだけ受容できるか、どれだけ寄り添えるかという教師の柔軟さを、自己成長の課題として取り入れていく」個人個人としての関係を大切にし、限られた共有できる時間を貴重に扱う。
「学級集団がもつグループダイナミクスの価値を尊重し、教師も集団の一員であることを自覚し、子どもと同じ土俵に立つ」子どもの目線で話したり物事を考えることは重要で、ただ単に教える者・教えられる者の関係では相互理解が表面的である。
また、日常の中で実践することとして具体的には、子どもの話をうなずいて聴く(うなずいて聴こうとする姿勢が、子どもに発言しやすくさせ、安心して学習に取り組めるようにさせる)・気持ちを受け止める(その時の子どもの気持ちを受け止め、言葉にすることが、子どもに自ら行動しようとする気持ちを抱かせる)・子ども同士の橋わたしをする(子どもの思いを教師が代弁したりすることが、子どもに自分が大切にされていると感じさせ学級内の人間関係を深める)等がある。
これらのカウンセリングマインドの実践により教師と児童・生徒間の人間関係が相互信頼と暖かい親密さによって児童・生徒の知識・理解の教授活動と情意面への援助活動が相互に補い合い、高めることができる。