論理的知能の発達と言語の発達




論理的知能の発達と言語の発達

論理的知能の発達と言語の発達は自我を中心に相互に関係している。

そもそも言語は、思考のための道具であると共に、意思疎通のための道具でもあり、さらには知識を共有するための手段でもある。論理とは思考の法則、思考のつながり、推理の仕方や論証のつながりのことであり、他者の思考過程の理解・推察等を含む幅広い思考処理の過程である。

言語の発達

言語の発達にはいくつかの段階がある。大きくまとめると、コミュニケーション関係形成の段階・生活言語習得の段階・書き言葉習得への発展的な段階・学習言語習得の段階と各段階を踏んで成長していく。論理的知能と特に関わりがあるのは生活言語習得から書き言葉習得への移行での対話による経験・知識・情報交換の力の発達において相互的に関連してくる。

子供は他者とのコミュニケーション、具体的には様々な話題(場面中でのこと、生活での経験、絵や本など)で話し合い(言葉のやり取り)を行う。そこで、必要な能力は集団の誰にでも通じるコミュニケーション手段であり、そのような関係・体験を経て、言語能力は発展していく。

また、このコミュニケーションの中で必要な能力として自分ひとりで自分の経験を伝える力というのが必要になる。頭の中であらかじめ話す内容を計画し、伝える言葉を考え、相手にわかるように話す力である。単に感想を述べるのではなく、誰にでもわかるように5W1H(いつ・だれが・どこに・なにを・どの・どうやって)を意識して、聞き手の質問に頼るのではなく、自分の言葉のみで伝えることである。

学校の授業において

授業で行われる発表の時間はこの能力の育成を目的としている大切な活動であると同時に、親しい人や同じ経験をした人にだけでなく、知らない人や大勢の集団の前で言葉だけで経験を伝える力の育成も含んでいる。

このような発表が可能になるためには、自分で話すことの内容や話す順番を考えたり、相手に理解してもらうためにどのような手段が必要なのかを事前に考えておかねばならない。そのためにはあらかじめ自分の頭の中で対話しながら考えることが必要であり、自分の中で話し手と聞き手にわかれて対話する力、すなわち自分の中で問いを作り、答えを見出す。この力こそが論理的思考発達の始点である。この自問、何故という疑問を持つことによって自らの思考を深め、納得することにより(相手に否定をされる場合もあるが、その場合は論理的思考を昇華させることが可能)、筋道の通った思考、つまり、ある文章や話の内容を論証の形式(前提-結論、また主張-理由という骨組)に仕上げることができる。

このように説明的文章の発達を目的とした発表において論理的な思考の発達を促すこととなる。根拠のある主張という論理的な考えを自問自答により発展させ、説明的文章で発表、または日常会話においても自分たちの考えを相手に伝えるコミュニケーションにおいて相互に成長していくものである。




多重知能理論

ハーバード大学の心理学者ハワード・ガードナーにおける多重知能理論の中でもこの論理的思考と言語の発達の二つが挙げられている。多重知能理論とは、

「人はそれぞれひと組の多重知性を持っており、少なくとも8~9の知的活動の特定の分野で、才能を大いに伸ばすことができる」

としている。この理論による8つの知能とは、言語的知能・論理的知能のほかに、リズムや音程・和音・音色の識別や音楽演奏や作曲・鑑賞のスキルとしての音楽的知能、からだ全体や身体部位を問題解決や創造のために使う能力として身体運動的知能、空間のパターンを認識して操作する能力として空間的知能、他人の意図や動機・欲求を理解して他人とコミュニケーションを円滑に進める対人的知能、自分自身を理解して自己の作業モデルを用いて自分の生活を統制する能力として内省的知能、自然や人工物の種類を識別する博物的知能がある。

多元的知能に基づき、これまでの言語的知能と論理的知能の発達に重点を置く指導を一新し、児童の学習スタイルにも多様性があるという前提で、すべての知能を刺激することで効果的な学習理解を促進しようとするものである。このように、論理的知能と言語的の脳の発達だけでなく、多面的な知能を発達させることが重要であるとされている。

以上のように知能の発達にはある事柄が独立して発達するのではなく、様々な要素が関連していることがわかる。特に論理的知能と言語的発達は関連が深く、前述のように発表の学習などをもって発達を相互に促すことが可能である。

相手を説得するという場面設定を行うことが重要である、何も発表の場を設けなくてもよい。ディベート形式の賛成・反対派に分かれての討論形式でもよいし、グループ学習においてそれぞれのグループの意見をまとめる作業でもよい。そのような場の中で自分の意見を説明的文章をもって相手に伝える事により論理的な思考・論述が必要になり、相互的な関係をもって成長させることができる。