教員採用試験について




教員採用試験とは?

教員採用試験とは、都道府県や政令指定都市が設置・運営する学校で教員を採用するための試験です。この試験に合格しないと、教諭(正式採用の教員)にはなれません。なお、教員採用試験は一般的に『教採(きょうさい)』と略して言われます。

たとえば医師免許やパイロットの免許なら、免許さえ取れれば、医師やパイロットへの道は約束されたようなものです。贅沢を言わなければ仕事に困ることはありません。

ところが、教員免許は全く違います。教員免許を取ることは、それほど難しくありません。大学を卒業できる学力があり、真面目に勉強さえすれば、教員免許は誰でも取れます。実際に教員になるには教員採用試験に合格しなければなりません。そして、本当に難しいのは教員採用試験に合格することなのです。

また、中学校・高等学校の教員は教科別の採用になりますので、倍率も教科によって異なります。一般的に倍率が高いのは社会(地歴・公民)、保健体育、芸術(音楽・美術・書道)などです。国語、英語なども比較的倍率が高い傾向にあります。逆に倍率が低いのは理科、数学、技術などです。ただし、学校種や教科ごとの倍率は自治体によって大きく変わりますし、同じ自治体でも年度によって変動します。




受験資格

教員採用試験の受験には教員免許が必要です。そのため教員免許を取得できる大学(一般的には教育学部)を卒業する必要があります。なお、教育学部でなくても教員免許は取得することができる場合が多いです。

例えば、文系の学部(商学部や法学部)では中学・高校の国語科や社会科の教員免許を、理系の学部(理工学部や数学部)では中学・高校の数学や理科の免許を取得可能です。小学校の先生になりたい場合は、教育学部に進学するのが一番の近道となります。

必須資格

教員採用試験を受ける場合に必要になるのが、受験する区分の教員免許状です。
受験する際は取得見込みでもかまいません。ただし、見込みの場合は、教員免許状の取得見込証明書を提出する必要があります。これは大学で取得します。

また、受験する試験の区分ごとにそれぞれの免許状が必要となります。

年齢制限

都道府県(市)によって異なりますが、多くが年齢制限を設けています。
他の都道府県より転任を希望される場合や、社会人特別選考などを利用して受験される場合は、年齢制限が高く設定されています。

欠格事項

以下の項目に1つでも該当すると受験できません。

・18歳未満
・高等学校を卒業していない
・成年被後見人または被保佐人
・禁錮以上の刑に処された人
・懲戒免職処分を受け、教員免許失効から3年が経過していない人
・教員免許の取り上げを受けてから3年が経過していない人
・日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又これに加入した者

欠格事項に高等学校の卒業がありますが、大検などにより高等学校卒業と同等と扱われる場合は受験することができます。

教員免許と教員採用試験の関係

教員採用試験に合格しなくても、教員免許があれば臨時(一年契約)で講師という職名で学校の先生になることができます。

あくまでも教員になるために必要なものは教員免許であり、教員採用試験は正規採用)の教員になるための試験です。

ですが、あくまで講師は臨時的採用ですので、給与面・雇用条件・立場的に教諭と比べて不利な立場にあります。

教諭と講師の違い

学校現場ではたらいている教員の職名には大きく分けて教諭講師があります。

教諭は教員採用試験に合格した先生で、講師は教員採用試験に合格していない先生(または受験していない先生)です。

ですが、教諭であろうが講師であろうが、児童・生徒の教育を行う先生には変わりはありませんので、仕事内容(担任を持ったり、授業をしたり、・生徒・生活指導をしたり、部活動の顧問を持ったり・・・)は同じです。そのため講師を続けつつ教員採用試験の勉強を行うのは非常に困難です。

教諭:終身雇用、給与面・雇用条件等で講師より優遇
講師:一年契約(一年ごとに労働契約を結ぶ)、給与面・雇用条件等で教諭より不遇

教員採用試験の合格は難関

昨今、企業等が人件費削減のために正社員を雇わず『派遣』で労働力をまかなっていることが社会問題化しています。これは、不況のあおりを受け、できるだけ安く労働力を確保したい企業側の戦略です(正社員よりも派遣の方がコストがかからない)。

そのため同じ仕事をさせるのであれば、コストがかかる教諭よりも、コストの安い講師としてはたらいてもらう方が財政的に利にかなっているので、教員採用試験の合格者数を制限しています。

昨今、団塊の世代が抜けつつあるため昔よりも合格率は上がってきていますが、それでも難関試験といえるでしょう。

教員採用試験の内容

教員採用試験の内容を大まかに書き出すと次のようになります。

・一般教養(中学校~高校1年程度の5教科の内容+α)
・教職教養(教育制度や教育史など、大学の「教職に関する科目」で学ぶ内容)
・専門教養(教員になった時に教える内容。小学校なら5教科or9教科、中高なら担当教科)
・面接・集団討論・模擬授業などの人物試験
・小論文、実技(小学校、中高一部教科など)、適性検査

一般教養

一般教養は配点ウェイトが低いわりに範囲が広いので、試験直前に対策しようと思っても不可能です。中学生・高校生の皆さんにとっては、いま学校で習っている内容をしっかりマスターしておくことが最善の対策です。

教職教養

教職教養は大学に入ってから習う内容です。高校の現代社会や倫理の教科書に出てくる著名な哲学者については、少し真剣に勉強しておくと良いでしょう。

専門教養

専門教養は、担当する教科の内容を問われます。小学校の場合5教科または9教科で、内容・レベルはやや難関校の高校入試くらいといったところでしょう。中学校・高校の場合は大学入試レベルの問題が出題されます。国語、数学、英語などは全ての受検者が同じ問題を答えますが、社会(地理歴史・公民)や理科は、共通問題+選択問題という形式をとるケースもあります。

公立学校教員採用試験では、上記の内容のほぼすべてを2~5日程度かけて実施しますが、私立学校の採用試験では教職教養や小論文を実施しない学校も多いようです。

近年は、面接や集団討論、模擬授業などの人物試験が重視される傾向にあります。教員になりたいからといって塾に通い詰めて勉強ばかりしているのではなく、学校行事や部活動にも積極的に参加し、多くの人と接する中で人間的魅力を高めておくのが最も強い武器になると思います。

教員採用試験の準備

始める時期

教員採用試験は、大学4年生の夏から受けることができます。準備期間がどれくらい必要かについては、校種や教科にもよりますし、その人の能力にもよるので一概には言えません。ただ、遅くても大学2年の秋には準備を始めましょう。

まずは、受験予定自治体の過去問を入手して1年分を解いてみましょう。過去問は多くの場合、都道府県(市)の情報公開窓口などで、閲覧・コピーが可能です。また、協同出版から「過去問シリーズ」として自治体別・校種教科別の過去問集が刊行されています(毎年10月頃に最新版が出ます)。教員採用試験は、自治体ごとに出題範囲や問題形式に違いがありますので、過去問で自分が受検する自治体の内容や形式をしっかり把握した上で、参考書や問題集で必要な部分だけ勉強していくのが効率的です。

大学3年の春には、来年の本番に備えて教員採用試験の模擬試験を受けてみると良いでしょう。模擬試験は東京アカデミーや時事通信出版局が4~6月ごろに実施しています。受験予定の自治体や校種・教科を記入すれば、合否判定もしてくれます。3年生ならC判定が取れれば上出来です。4年生であればB判定以上を目指しましょう。

面接や集団討論に自信がない人は、東京アカデミーや河合塾KALSなどが開講している人物試験対策講座を受講する方法もあります。授業料は30~50万円と安くはありませんが、それで合格できるのなら安いのかもしれません。